「いくつかの株に投資をし、権利確定日に株主名簿に名前が載っていて、それらの株主優待がもらえるとしても、権利確定した途端に大きく株価が下がったりしたら、損になる事もありますよね。そこで今回は、株の値下がりによる損失をほぼゼロにして、つまりほぼタダで株主優待を受け取る方法について説明します。」
「株主優待をもらえても、権利確定後に株価が下がったりしたら、逆に大きな損になる事もありますよね・・・。(権利確定後に)株価が下がっても、損失をほぼゼロにする事が出来るようなやり方があるのですね。」
「はい、あります。まず簡単に言うと、買い(現物買い)注文と売り(信用売り)注文を同時に行って、権利確定をし、配当や優待をもらえる権利が確定した後に、買いと売りを同時に決済するというやり方になります。もう少し詳しく説明していきたいと思います。」
「よろしくお願いします。」
「このためには、まず信用取引が出来る事が条件になります。方法は、最初に権利確定日(権利確定日について参照)の3営業日前、つまり権利付き最終日前日の取引が終わった時間の夜などに株主優待がほしい株の現物買い注文と、現物買いした銘柄と同数同銘柄を、レバレッジ1倍で信用売り注文(逆日歩が発生しない一般信用取引の売り注文)をします。つまり権利付き最終日当日の朝一番(翌朝一番)に売り買いが同時に行われるように注文します。このように売り買い同時に行われるように注文する方法を両建て、もしくは、クロス取引と言います。複数ほしい銘柄があれば、両建ての注文を複数銘柄に行います。
そして、それらを権利付き最終日の一営業日後の朝一番に決済するようにします。つまり権利付き最終日から一営業日後の権利落ち日に現物買いした株と信用売りした株を現渡しして決済するようにします。現渡しとは現物で買った株(信用売りした株と同銘柄で同数の現物株)で、信用売りした(借りた)株を返して決済する事です。
現渡しでの決済では手数料が発生しないため、プラマイゼロで権利確定が出来ます(買いは、権利獲得のために現物買い=通常の株取引です。信用買いでは、権利獲得出来ません。売りは、信用売りしか出来ないので、必然的に信用売りになりますが・・・)。
これはメジャーな方法ですが、貸借銘柄でない株や売り禁などが出ている銘柄は信用売りが出来ませんし、長く保有している株主には豪華な優待、短期間の所有者にはそれなりの優待というところもあるため、注意も必要かと思います。」
「配当はどうなりますか?」
「現物買いで配当金をもらえるのですが、権利付き最終日から権利落ち日をまたいで信用売りをすると、配当金調整額という費用を支払わなければならなくなります。配当金の支払いが権利落ち日を過ぎて確定すると、配当金額分だけ株価も下がるとみなされ、その調整額を払う必要が発生し、現物買いで受け取った配当金と支払うべき配当金調整額で相殺され、ほぼプラマイゼロになります。
つまり今回の手法は、配当金ほぼプラマイゼロ、損失ほぼプラマイゼロで、株主優待を受け取る方法になります。結果としては、プラスの利益(タダで株主優待獲得)になります。」
【補足】
クロス取引(同銘柄同数の株で、現物買いと信用売りを同時に行う事。)
配当金調整額(権利付き最終日と権利落ち日をまたいで信用売りをしていた時に、配当金の分だけ株価が下がるコストを、信用売りを行ってた投資家が支払う事になり、その時に支払う費用の事。クロス取引の場合、配当金と配当金調整額は同じだが、配当金は満額から所得税の源泉徴収分を引き抜いた金額を受け取る、配当金調整額は配当金満額分を支払う、よって支払う配当金調整額の方がやや多くなる。受け取った配当金より多く支払った配当金調整額との差額は申告する事により戻る。また配当金は所得税になるが、配当金調整額を受け取った側は譲渡益となり譲渡課税がかかる。一般信用取引だと受取配当金より支払う配当金調整額の方がやや多くなるが、制度信用取引では受取配当金の方が支払う配当金調整額よりやや多い。ただ制度信用取引では逆日歩という大きな費用が発生する場合もあり、受取配当金と配当金調整額の差額の利益より、損失の方が勝る場合も発生する。)